夜の密会に仕立て上げられた罠、禁足処分を受けた五公主、そして処刑場での叫び。愛と正義が交差する中、凌不疑と少商の間に初めて生まれた「溝」は、信頼の証か、それとも別れの予兆か。
命の危機、家族の崩壊、そして隠された秘密部屋――次々と暴かれる真実の先に待つのは、衝撃の結末だった。
Contents
「星漢燦爛」第37話 あらすじ:罠と決意、揺れる心
五公主が仕掛けた罠は、夜の静けさに紛れて少商を巻き込んだ。宮中での密会をでっち上げられ、翌朝にはあらぬ疑いが立っていた。皇后の前でその疑惑が問われると、少商は迷いなく反論した。けれど、無実を訴える彼女の声は、場の空気にかき消される。
だが、その芯の強さを見た皇后は、五公主の陰謀に気づき始める。少商はその場を退いた後、自らの手で真実を明かすと決めた。すぐさま五公主の弱点を突き、緻密な報復に打って出る。結果、五公主の策略は白日のもとにさらされ、文帝と皇后からの厳しい処分が下る。彼女は禁足を命じられ、その傲慢さも沈黙に包まれた。
しかし、事はそれで終わらなかった。凌不疑が五公主の侍女を連れて現れ、証言を求めた瞬間、空気が一変する。少商を守ろうとする彼の姿勢は真っ直ぐだったが、少商にはそのやり方が許せなかった。誰の助けも借りずに戦ったその夜の孤独を、彼が理解していなかったことに、深く傷ついたのだ。
言い争いは避けられなかった。言葉は噛み合わず、感情がすれ違う。凌不疑は、自らが少商の自由を縛っていたことに気づき、言葉を失う。少商の目の奥にある怒りと悲しみに触れ、初めてその痛みに向き合った。
二人の間には、ひとつの溝が生まれていた。
文帝は、静かに事の全貌を見届けていた。家族である五公主への情ではなく、皇室の秩序と少商の誠実さを優先した判断だった。その厳正さが、少商の立場を確かなものに変えていく。
けれど、勝ち取った正義の裏側に、傷ついた心が残っていた。
- 五公主による罠に巻き込まれながらも、程少商は自らの力で真相を暴き、陰謀を退けた
- 凌不疑の助けに頼らなかった少商と、それを理解できなかった凌不疑との間に深い溝が生じた
「星漢燦爛」第38話 あらすじ:処刑場の叫び、ふたりの選択
冷たい朝の空気の中、凌不疑は静かに処刑場へと歩を進めていた。文帝の命令を前に、抗う素振りも見せない。都に広まった五公主の密会。その真相を暴いたのが彼だと知った文帝は、王族の体面を守るため、厳罰を下すことにした。
杖刑と聞いた瞬間、程少商の胸が締めつけられた。信じられないというより、受け入れたくなかった。彼を助けようと門を駆け出したが、護衛たちの前で足を止められる。声を張っても、誰にも届かない。
処刑場の空気は重く、静まり返っていた。杖が振り上げられたその瞬間、彼女の声が割って入る。「やめてください!」その叫びは震えていた。震えていたが、確かにそこにあった。彼を想う心、守りたいという意思が。
文帝の視線が程少商に向けられる。彼女の瞳の奥に宿った真っ直ぐな感情が、彼を揺らした。計算でも策略でもない、ただ一人を想うその叫び。文帝はふっと目を閉じた。
杖が振り下ろされることはなかった。
遠くで見ていた五公主は、何も言えずにいた。都に広まった噂が、ここまで事態を動かすとは思ってもみなかった。自分の軽率な行動が、逆に凌不疑と程少商の絆を強くしたという事実を、認めるしかなかった。
その日、程少商は初めて、自分の感情を言葉にした。凌不疑は、何も言わずにそれを受け止めた。だがその眼差しは、確かに彼女を見つめていた。すべてを赦すように。
運命が一度交わっただけの二人ではなかったということだ。
- 凌不疑に科された杖刑を、程少商が命懸けで止めたことで、二人の絆が再確認された
- 文帝の前で感情を露わにした少商の姿が、周囲の空気と運命を大きく動かした
「星漢燦爛」第39話 あらすじ:殺意の影、揺れる正義
梁尚が殺されたという報せが入ったのは、朝もまだ暗い時刻だった。凌不疑はすぐさま程少商を連れ、梁家の門をくぐる。空気は張りつめていた。家人たちの視線が二人を刺すように追い、誰もが口を閉ざしていた。
屋敷の奥、静かに座っていた曲泠君は、ただ一点を見つめていた。頬には傷が残り、手は震えている。凌不疑が彼女の前に立つと、その目にわずかに光が戻る。梁尚が生きていた最後の時間、彼女は確かに彼と二人きりでいたという。だが、その時間に何が起きたのかを語れる者は、彼女しかいない。
程少商は袁夫人と密かに言葉を交わす。梁家の使用人たちの動き、親族の不自然な反応、それらをひとつずつ拾い上げていく。事実を積み重ねるしかなかった。
凌不疑の問いに、曲泠君はゆっくりと首を横に振った。夫の暴力に晒されていたことを語るその声はかすれていたが、揺れてはいなかった。凌不疑は言葉を飲み込み、ただ頷いた。その沈黙の中に、彼女を守ると決めた意志が滲んでいた。
やがて、梁家内部で隠されていた証拠が明らかになる。梁尚の粗暴な振る舞いと、それに対する怨嗟。凌不疑の調査によって、曲泠君の無実は徐々に浮かび上がることになる。
だがそれと同時に、梁家の怒りは増幅していた。程少商がその中心にいることは明らかだった。彼女の存在が、事態をさらに複雑にしていく。彼女は黙って全てを受け止め、凌不疑の隣に立ち続けた。
この事件は、単なる殺人事件ではなかった。家と家、信頼と裏切り、正義と復讐の境界が、曖昧なまま揺れていた。そんな中でも、凌不疑と程少商の目だけは、揺るがなかった。
- 梁尚の死を巡り、梁家の内部に隠された闇と曲?君の過去が浮かび上がった
- 程少商と凌不疑が共に真相を追う中で、彼らの信頼関係が深まり、家族の対立を超える覚悟が見えた
「星漢燦爛」第40話 あらすじ:隠された部屋、終わらぬ事件
梁尚が殺された夜、程少商はただならぬ気配を感じていた。彼の部屋を調べるうち、壁の裏に不自然な隙間を見つける。手探りで扉を開けると、そこには誰も知らない隠し部屋があった。
中に踏み入れた瞬間、背後から何者かが現れた。梁遐だった。彼は一言も発せず、鋭い目で程少商を睨むと、静かに部屋の扉を閉めた。
凌不疑はすでに梁家の不穏な動きを察知していた。部屋に踏み込むと、すぐに隠し扉の存在に気づく。中に突入し、梁遐に拘束された程少商を無傷で救い出した。梁遐は逃げることも抵抗することもせず、ただ兄を見つめていた。
しかし、その場には別の結末が待っていた。梁遐は、兄の手によって命を絶たれる。その瞬間、長年積み重なっていた梁家の内部抗争が、ついに崩壊の兆しを見せた。
一方、曲泠君は夫・梁尚の死により疑いの目を向けられていた。彼女は必死に無実を訴え、ついには文帝の前に出て、自らの潔白を証明してみせる。だがその静かな姿には、孤立と怒りが入り混じっていた。
すべての真相が明らかになったわけではない。ただ一つ確かなのは、程少商と凌不疑の間に強い信頼が生まれたということ。命の危機を共に越えた彼らは、これまでより一層深くつながっていた。
事件は終わっていない。ただ、ひとつの幕が閉じたにすぎない。
- 程少商の機転と凌不疑の迅速な救出により、梁遐の暴挙が暴かれ、梁家の崩壊が始まった
- 隠された部屋と複雑に絡む家族の確執が明かされ、少商と凌不疑の絆がさらに強固なものとなった
感想
五公主の陰謀に巻き込まれながらも、少商が自らの手で真実を暴く姿には、言葉にできないほどの静かな強さを感じた。誰にも頼らずに戦った夜、その孤独に対する凌不疑の無理解が胸に刺さる。処刑場での叫びもまた、愛ゆえの苦しさがにじんでいた。
そして梁家での殺人事件。信頼と裏切りの境界で揺れる中、少商と凌不疑がともに危機を越え、絆を深める様子には、不器用な二人だからこその切実さがあった。けれど、それは単純な勝利ではなく、傷ついた心と、なおも続く疑念が残る結末。
どれほど真実に近づいても、誰かが傷つく現実。その余韻が、深く、長く、胸を締めつけた。