冷静沈着な李蓉と、策士・裴文宣。互いを支えながらもすれ違う二人は、権力の渦にのみ込まれながら、決して後ろを振り返らない。「守る」ために選んだ道が、運命すら書き換えていく。
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「度華年(どかねん)The Princess Royal」第13話 あらすじ:皇帝への進言と、偽りの死
宮中に緊張が満ちていた。朝の光が玉座の間を照らす中、李蓉は一歩前に進み、皇帝の前に跪いた。裴文宣がその背後に控え、沈黙のまま彼女の言葉を待っている。李蓉の声は静かだったが、その一言一言に重みがあった。世家の専横を抑えるため、新たに監察司の設立を求める。その提案は、宮廷全体をざわつかせるに十分だった。
この計画の裏で、李蓉はすでに一つの芝居を打っていた。側近の秦真真が、公主府の前で自害するという報せが広がる。白い衣が血に染まり、人々の悲鳴が夜の宮に響いた。だがそれは、李蓉の仕掛けた偽りの死だった。秦家に対する同情と怒りを煽り、皇帝の心を動かすための策。その冷静さの奥に、李蓉の覚悟が光っていた。
裴文宣はその計画を支えながらも、時折李蓉の表情を見つめていた。彼女の目に宿る強さと孤独。そのどちらも、彼にとっては懐かしく、痛ましいものだった。彼は権力の策士であると同時に、彼女を守りたいと思っていた。だが、その思いがどこまで届くのか、自身でもわからなかった。皇帝が返答を渋る中、裴文宣は密かに動き、朝臣たちの間に賛同の声を広げていく。
上官雅はその渦の中で、李蓉に歩み寄った。彼女は世家の一員でありながら、李蓉の意志に惹かれていた。李蓉の勝利は、自らの安泰にもつながる。上官雅は密談の席で、世家の一部を味方につけ、李蓉の提案を後押しした。李蓉はその力を巧みに利用しながらも、心の奥でどこか警戒を解かなかった。
やがて、皇帝は沈黙の末に頷いた。監察司の設立が正式に認められる。宮廷の均衡が、静かに揺らぎ始める。李蓉の周囲に集まる視線には、称賛と恐れが入り混じっていた。
その夜、李蓉はひとり灯の下に座っていた。秦真真の死が偽りであっても、その血のような赤は、心から消えなかった。裴文宣が訪れ、言葉少なに杯を差し出す。二人の間にあるのは、共闘の絆か、それともまた新たな試し合いなのか。
宮の外では、風が乾いた音を立てていた。李蓉が選んだ道は、孤独と権力の交わる場所。その静けさの中で、彼女はゆっくりと盃を傾けた。これが自らの選んだ未来だと、そう確かめるように。
- 李蓉は宮廷にて監察司の設立を提案し、静かな言葉で大胆な改革を押し進めた。
- 側近・秦真真の偽りの死を利用して皇帝の心を動かすという冷徹な策を実行する一方で、裴文宣との微妙な感情の揺れも描かれた。
「度華年(どかねん)The Princess Royal」第14話 あらすじ:傷に触れて、心が揺れる
李蓉は、裴文宣の傷ついた腕にそっと触れた。冷たい指先に伝わる熱が、彼の痛みの深さを物語っていた。彼が自分を庇って受けた傷だと知った時、胸の奥に重いものが広がった。彼女は黙って布を取ると、その傷口を包んだ。言葉はいらなかった。ただ、その手が離せなかった。
裴文宣は、李蓉の姿を見つめていた。彼女が誰よりも強く、そして優しいことを知っていた。それでも、彼女が自分のために危険に踏み込もうとすることが怖かった。秦家の事件に関わるという話 あらすじ:を耳にした瞬間、胸の奥に焦りが走る。彼は李蓉の肩を掴み、静かな声で制した。
「お前がそこへ行く必要はない」
その声は震えていた。守りたいという気持ちと、過去に失った恐れが交じっていた。
李蓉は、その手を見下ろしたまま首を振った。
「あなたが背負っているものを、私も見たいの」
その言葉に裴文宣は何も返せなかった。前世では交わらなかった心が、今世では確かに触れ合おうとしている。それが嬉しくもあり、怖くもあった。
一方で、上官雅は静かに微笑んでいた。李蓉に蘇容卿を検察官に推すよう勧めるその口ぶりは穏やかだったが、瞳の奥には計算があった。李蓉が裴文宣のために行動すればするほど、彼らの間に溝ができる。上官雅はその綻びを狙っていた。
やがて、裴文宣は上官雅の意図に気づく。李蓉の決断を聞くたびに、焦りが募った。彼女を信じたい。しかし、再び失うのが怖い。感情の奥底で、理性と恐れがせめぎ合う。
夜、灯りの揺れる室内で、李蓉は机に向かって筆を取っていた。裴文宣のために、秦家の真実を明らかにしようとしていた。外では風が強く吹いている。扉の外に立つ裴文宣は、何も言えずにその背中を見つめていた。彼女を止めることも、行かせることもできない。
上官雅の仕掛けた波が、静かに二人の間に広がっていく。けれど、李蓉の決意は揺らがなかった。彼女はもう、恐れよりも信じることを選んでいた。
そして裴文宣もまた、その背中に誓うように呟いた。
「今度こそ、失わない」
二人の絆は、試されながらも確かに強くなっていた。信頼のかたちが、少しずつ新しい輪郭を描き始めていた。
- 裴文宣の傷に手を添える李蓉の描写から、互いの過去と想いが交錯し、静かに距離が縮まっていく。
- 上官雅の策略により二人の絆が試される中、それでも李蓉は信じることを選び、裴文宣もまたその背を見守る決意を新たにした。
「度華年(どかねん)The Princess Royal」第15話 あらすじ:鞭の音の中で、声を上げる者
裴家の中庭に、雨が静かに降り続いていた。濡れた石畳の上に、鞭の音が乾いた音を立てる。裴文宣は背筋を伸ばしたまま、ただその痛みに耐えていた。家の名を汚したと責め立てる声が遠くで響く。その声を遮るように、李蓉の足音が近づいてきた。
彼女はためらいもなく、鞭を振るう者たちの前に立ちはだかった。濡れた衣の裾を握りしめ、冷たい視線を向ける。誰もが息を呑んだ。長公主が、裴家の家中で声を上げるなど前代未聞のことだった。李蓉はその場で裴文宣の罪を否定し、彼を庇った。言葉に揺らぎはなかった。
夜になり、李蓉は彼の部屋を訪れた。灯火の明かりの下、裴文宣の背に深い傷跡が並んでいた。彼女は黙って薬を塗り、布を巻く。手の中で感じる彼の体温が、かつての距離を思い出させる。裴文宣は何も言わず、ただその手の震えに気づいていた。
「もう耐える必要はない」と李蓉が言った。声は静かだったが、確かな強さがあった。その言葉に、裴文宣の胸の奥で何かが解けた。彼は初めて、彼女に感謝を込めて微笑む。
その頃、蘇容卿は王城の外れで李蓉を待っていた。雨脚が強まり、灯がひとつ消える。彼女は来なかった。遠くで馬の蹄の音が響くたびに、彼の手がわずかに動く。だがその音は、いつも別の方向へと消えていった。翌朝、李蓉が裴文宣を守ったという噂が宮中に広まる。蘇容卿は何も言わず、ただ空を見上げた。
李蓉の行動は、すぐに都中の話 あらすじ:題となった。誰もが彼女の強さに驚き、彼女の名を口にした。裴家の圧力の中で、彼女だけが彼を守ったのだと。裴文宣はその視線を受け止めながら、静かに決意を固めていた。
李蓉が守ってくれたなら、今度は自分が守る番だと。
- 裴文宣への鞭打ちの場面で、李蓉が一族の前に立ちはだかり、彼を守る姿勢を示すことで長公主としての威厳と覚悟が際立つ。
- 宮中では李蓉の行動が称賛され、裴文宣自身もまた、彼女の存在がどれほど大きいかを自覚していく。
「度華年(どかねん)The Princess Royal」第16話 あらすじ:財産と信頼、揺らぐ家族の輪郭
裴家の屋敷に、怒号とすすり泣きが入り混じっていた。遺産の分配をめぐり、叔父たちが声を荒げている。李蓉は静かに座し、冷えた茶を一口含んだ。裴母の憤りも、下女たちのざわめきも、彼女の表情を揺らすことはなかった。
「この家の財は、裴文宣のものでしょう」
彼女の言葉が響くと、場の空気が一瞬止まった。李蓉は手元の文書を開き、ひとつひとつの項目に印を押していく。清算、分配、監査。誰の声も遮らせない。やがて、彼女は立ち上がり、裴文宣の方を見やった。
「明日には公主府に移ります。これ以上、裴家の混乱に巻き込まれるわけにはいきません」
裴文宣は、母の部屋の扉を静かに閉めた。幼い頃から彼を支えてきた母の手が震えている。彼はそっとその手を取った。
「母上、叔父たちの言葉を信じてはなりません。家を守るためには、真実を知らねばならない」
母の瞳に迷いが浮かぶ。だが彼は、その視線をまっすぐ受け止めた。守りたいのは家ではなく、信じ合える関係だった。李蓉と、母と、そして自分自身のために。
その頃、蘇容卿は宮門の前に立っていた。李蓉が刑部に向かったと聞き、すぐに駆けつけたのだ。彼女が権力者たちに立ち向かう危険を知っていた。
「行くな、李蓉。今はその時ではない」
彼女は立ち止まらなかった。
「私のことを案じるなら、邪魔をしないで」
その一言が、蘇容卿の胸に深く刺さった。守りたいという思いが、彼女にとっては束縛にしか見えなかったのだ。二人の間にあった信頼は、その瞬間、形を失った。
李川はその報告を受け、眉をひそめた。裴文宣の動きが読めない。李蓉が彼と手を組むなら、朝廷の力関係が崩れる。兄としてではなく、一人の政治家として、彼女を警戒し始めた。
夜、李蓉は机の上に積まれた帳簿を見つめていた。燭の火が小さく揺れ、影が壁に映る。裴文宣が背後に立ち、静かに言った。
「今日の判断、見事でした」
李蓉は振り向かずに答えた。
「あなたの家だからこそ、私が手を下すしかなかった」
二人の間に、かすかな沈黙が流れる。そこには、かつての疑念ではなく、同じ方向を見つめる意志があった。だがその陰で、信頼を失った者たちの思惑が静かに動き始めていた。
夜が更ける。宮中の灯が遠く霞む中、李蓉は決意を胸に息を整えた。もう後戻りはできない。彼女の選択が、すべてを変えることになるのだから。
- 裴家の遺産争いの渦中、李蓉が冷静に介入し、裴文宣の正当性を確保するために果断な行動を取る。
- 蘇容卿とのすれ違い、兄・李川の警戒など、李蓉を取り巻く人間関係が複雑に絡み合い、彼女の決断が次の波乱を呼ぶ布石となる。
感想
李蓉の決断が一歩進むたびに、世界が少しずつ変わっていく。どこまでも静かで、けれど確実に心を揺さぶる描写の数々に、息を呑む瞬間が続いた。権力を巡る駆け引きと、言葉にできない感情の交差。
今話では、李蓉と裴文宣の距離が確かに縮まりながらも、周囲の思惑が濃く絡み始めている。誰を信じ、何を選ぶのか。その問いが胸に残り続ける展開だった。
